先週から県内の天気予報を見ていると2桁の数字をよく見かけるようになってきました。

春を感じさせる陽気になってきましたが、まだまだ雪が残る松代です。

私は十日町市外から通勤してきているのですが、全く雪のない自宅から徐々に雪壁が大きくなっていくのを通勤中眺めていると、豪雪地帯の雪の凄さや雪のある地域の環境の違いを考えさせられます。

3月。まつだい棚田バンクでは、これから本格的に迎える春に向けて育苗の準備を進めています。

この春の準備ですが、平地と雪の残る中山間地の農業ではやり方や作業時期が異なります。

ここで苗が起きるまでの作業を少し皆さまに紹介したいと思います。

雪の多い地域の農業で一番最初に始まるのが除雪作業です。

3月上旬、すでに雪のない平地では田んぼの中での作業を始めたり、畔の管理を始めますが、私たちが田んぼで作業ができるのは雪の溶けた4月の中旬からになります。

田んぼで作業が出来ないこの時期は雪のあるうちにできる作業を行います。

種を撒いた苗箱を並べる苗代。毎年この苗代の除雪から作業が始まります。

1m以上の層になった雪をまず重機やトラクタに装着した投雪機を使用して可能な限り除雪します。その後田んぼの中に水を溜めて徐々に雪を溶かして行きます。

また苗を育てるパイプハウスについてもこの地域では雪が溶けたら設置して、春の利用が終わると冬の雪を見越してハウスを撤去する必要があります。

これだけを聞いてしまうと、雪ってやっぱり大変なんだなと思われてしまうかもしれません。

ですが棚田の水源となる「雪解け水」は春の田んぼにとって貴重な水となります。ありすぎてもなくても困る雪。自然と向き合うことを春になるとより強く感じます。

除雪が早く終わるかはとても重要で、このスピードはその後の農作業にとても影響してきます。

除雪が完了した苗代

除雪作業と同時進行で行われるのがこちらの「浸種」です。

乾燥して休眠状態にある籾を水に浸して水分を吸わせ、温度をかけることによって籾は活動を再開します。品種にもよりますがコシヒカリについては積算で100度(その日の水温が10度であれば10日間)になるまで水につけてあげます。

その後さらに水温を25度〜30度近くまで上げ全ての籾の眠りを起こし、芽を揃える「催芽」というアクションを加えます。

これでようやく種まきが行える状態になります。

写真赤丸の籾の様に芽が出てきます。

現代では水温をコントロールできる催芽機といういう機械が普及してきていますが、この機械がない場合は外気温や水温を考え、種が休眠から起きる積算温度まで水温をコントロールする必要があります。この時期の平均気温が低い松代地域では浸種時間を長くしたり、眠りを覚めやすくする為に浸け始めの水にお湯を入れて水温を上げてあげたりと工夫が必要です。

また休眠から眠りの冷めた籾を濡れたまま放置しておくとあっという間に芽が出てしまい、機械で種まきを行うことができなくなってしまいます。(機械で芽が折れた種もみはその後成長しません)

こちらをまた陰干しして乾かしてあげることによって種まきを行う日までの芽の出具合を調整することができます。

こちらが播種を行っている様子です。

床土=種のベットとなる土 根が伸びる為、栄養分が入っている土を敷く

覆土=種の上に被せる布団となる土

播種機といういう機械を使用して床土、種もみ、覆土、水の順番で苗箱に均等に散布して行きます。種籾、土、水、多すぎても少なすぎてもいけません。

一箱あたり120gの種もみを撒くという設定で機械を動かしていきます。

必要以上に種を撒いてしまった場合、苗同士が栄養の取り合いをしてしまい栄養欠乏になってしまいます。しっかりと苗床で育てた強い苗を植えることによって、田んぼに植えられた後の成長にも大きく影響してきます。

播種が終わると芽出しという作業を行います。

30度に設定された「育苗機」という機械の中で約1cmぐらいまで芽を揃えます。

芽が出揃った様子

こうして芽が揃った苗は除雪の完了した苗代に並べられます。

松代では外気温が低い為、被せるシートの枚数を通常よりも増やしたり、温度をキープできるような専用資材を使用します。

苗代に出た後も高温障害や霜に気を配りながらシートを被せたり、剝がしたりを繰り返して成長を見守って行きます。

成長してきた苗の様子

ここまで苗が育つまでの様子を紹介してきました。

雪がある3月から5月まで約1カ月半を通して苗を大切に育ててようやく田植を行う事ができます。

通常の管理でも大変な育苗ですが、残雪や気温の低さなどこの地特有の条件と上手く付き合いながら農業をしてきた農家さん達の知恵や工夫にいつも感動します。

春の作業ですが、この管理が上手く行ったかが一年の耕作を通して大きく影響してきます。

農業の師匠や先輩の農家さんはよく「春の作業を失敗すると後で取り返すことは出来ない」と言ってこの春の時期については特にシビアに作業を行っていました。

今年度からまつだい棚田バンクの耕作する面積は2ha増え合計10haになります。

規模が大きくなった中でもしっかりと農業ができる様に作業計画や、道具の準備、機械の整備を行って本格的な春を迎えたいと思います。

またこの春に皆様と田植ができるのを楽しみにスタッフ一同頑張って参ります。

(2023/3/9 まつだい棚田バンク)