2月24日に、北川フラム塾「なぜ芸術祭で農業をやるのか」が代官山のアートフロントギャラリーの会場とオンラインで開催されました。ゲストは、今年度からまつだい棚田バンクと連携し、新しいアイディアの創出やプロジェクトのブラッシュアップを一緒におこなっていただいている、株式会社マイファームの浪越隆雅さんです。

〈まつだい棚田バンクの可能性〉

棚田での農業は、労力二倍、収量半分だと言われており、棚田での農業を続けていくことは容易ではありません。

そんな棚田での農作業の現状を踏まえて、浪越さんからは下記のお話をうかがいました。

「近代の工業化によって農業も労力を減らし収量を増やす、効率的な”胃袋を満たす農業”となってきました。しかし、棚田でただ単に食糧生産を追求すると、生産性が低いという話になって継続が難しくなってしまいます。

農業の楽しさや笑顔になってもらう”心を満たす農業”も重要なのではないかという視点から、マイファームでは「自産自消」というキーワードを掲げ活動しています。つまり、自分で土を触ったり楽しい農業を体験し、そこから農業をやりたいと思う人、楽しく作られた農作物に価値を感じる人などを増やし、楽しさがつながる農業をすることで、胃袋だけでなく心を満たす農業があり得るのではないかということです。

まつだい棚田バンクの農作業体験には多くの会員の皆さんが集まり、地域のお父さん方と笑顔で農作業をしています。さらに大地の芸術祭のアートやFC越後妻有などの農業とは関連がないような要素が加わることで、マイファームの活動からも予想できないような現在の農業にはない楽しさ、わくわく感を創出するモデルになるのではないかと期待しています。」

〇まつだい棚田バンクスタッフ 渡邊の感想

浪越さんの話を聞いて、初めて農作業を経験した1年目のことを思い出しました。田植えから稲刈りまで、予想をはるかに超えるお米作りの大変さに日々驚いていました。段々の棚田の畔を上り下りしながら草刈りした日、機械の入れないぐちゃぐちゃの田んぼを何枚も手刈りした日には、クタクタでお家に帰っていました。そんな日でも、なぜか不思議と心は疲れていなくて、むしろ元気になっていたのです。明日の作業を楽しみに眠る日々でした。きっと、浪越さんの言う”心を満たす農業”に、いつの間にか私自身も虜になっていたのだと思いました。棚田バンクの活動を日々行いながら、そんな”心を満たす農業”をもっと広めていきたと思っています。この自然いっぱいの越後妻有地域に来て、棚田を見て美しいと思ったり、さらには自然の中にあるアートを見て感動してもらったりすることで、いつのまにか心が豊かになっているという経験をもっと多くの人にしてもらいたいです。さらには、その棚田を守ろうと一緒に活動してくれる仲間を増やして、きれいな棚田を守り続けていきたいです。また、自分は農業については初心者で、サッカーと2足の草鞋の活動をしていることでなかなか農業が上達しないようにも感じていましたが、そこに可能性があるという話を聞いて驚きました。

〈アートと農業〉

フラムさんからは、こんな話もありました。

「農業を始めたいと思って新規就農者が、地域に飛び込んでいき必死に農作業をしていると、地元の人たちがその姿に感動して、助けてくれます。芸術祭も最初のころは、周りの風当たりは強かったですが、作家さんが必死になって頑張っている姿を見て地元の人々は心を打たれました。そういったところは、農業とアートも似たところがあります。自然にできあがる曲線の丸い安心感も、人工的な直線の角ばった四角にも美しさがあります。自然から除外された人間が、人工的な環境、感覚の中で、なんとか自然や歴史に対して足跡を残そうとする姿をすごいと僕は思っています。人が魅力を感じたり応援したくなったりするものは、どこか人間味があるようなものです。そういった意味では、農家と美術家は共感できるのだと思っています。」

いろいろな話を聞けたフラム塾でした。

【その他、講演会実施のご報告】

2/14(火) 農福連携フォーラム 場所:長岡市栃尾、トチオーレ

2/19(日) まちづくりフォーラム 場所:上越市柿崎市、柿崎コミュニティプラザ

2/14(火) 農福連携フォーラムの様子

(2023年3月10日)