皆様今年の冬はいかがお過ごしでしょうか?

先週、世間のニュースでは関東地方の大雪が騒がれていました。

地域によっては「大雪」というスケールが様々で、この雪にまつわる文化やストーリーもそれぞれ違います。

関東と豪雪地域ではもちろんのこと、新潟県内でさえもそのスケールには違いがあります。

筆者の暮らす柏崎市では降雪量が30cmを超えると「大雪になった」というイメージがあります。しかし、豪雪地域の松代では30cmを超える降雪量はシーズン通してよくある数字。県内でもこのように大雪のというイメージが変わってきます。

昨年話題になった、雪による車の立往生。この時の降雪量は62cmだったそうです。柏崎で50、60cmの降雪が一晩で降ると、交通は麻痺して街の道路は激しく凸凹になります。しかし、松代や十日町、魚沼、湯沢、妙高などで同じ量の雪が降っても交通にそこまでの大きな影響はありません。自治体によって、除雪費や設備されている機械、人員の規模や量、また排雪場所の有無などもそれぞれです。大雪に対する経験や知識も地域によって違うのでしょう。

新潟といえば「豪雪」「ウィンタースポーツ」という雪のイメージが強い地域ですが、今年の冬は暖冬の影響を受けて小雪が続いております。

2月現在の柏崎市の雪の量です。小雪の影響もあり田んぼの土が見える程度の積雪です。

こちらは松代地区。さすがの松代でも今年は雪が少ないです。

こちらは奴奈川キャンパスのある室野地区。雪壁の高さを見ると松代よりは積雪が多い事が分かります。

こちらは星峠の展望台付近。小雪と言われるシーズンですがそれでも星峠まで来ると雪の量が多くなります。

今年の小雪の原因と言われるエルニーニョ現象。現在発生している規模の大きいエルニーニョ現象は2024年春まで続くとのことです。この時期にはあまり見ない雨が降り「暖かい冬」といったイメージが強いシーズンが続いています。

雪が少ないと、どんな影響があるのでしょうか?自然や農業に及ぼす影響を少しお話したいと思います。

まず1つ目。雪はダムの役割をしています。一度に降る量が雪と雨、同じ量が降ったとしても一度に流れる水の量としては大きな差があります。降り積もった雪は春にかけて徐々に溶け、里山や田畑に潤いをもたらしてくれます。

春先はこのように豊富な雪解け水が流れ出します。

2つ目は空気を澄ましてくれることです。大気中の塵は雪に絡みついて地上に落ちていきます。大雪明けの晴れた日は空気の澄んだ素晴らしい雪景色を眺めることが出来ます。

3つ目に農業に最も影響がある雪解けによる水。この雪解け水は、棚田の農業において、とても重要な資源になります。

平地の田んぼには写真のようなポンプ場といった水を川や池からくみ上げる設備があります。

田んぼにはこのようなバルブがついていて、水道の蛇口のように自由に水の出し入れができます。(※平地でも水の使い過ぎや出しすぎには注意して作業しています。)

棚田の田んぼにはこのような施設はほぼありません。山水や雨水を使い農業を行っています。雪が沢山降った年はこの雪解け水が豊富に流れてきますが、雪の少ない年は山に蓄えられる水も少なくなり、すぐ水不足に陥ってしまいます。

水を少しでも保てるように秋に代掻きをしたり、畦道を機械で踏んで小さな穴を潰したりと様々な工夫は行っていますが、それでも雪の少ない年は水がなくなってしまうのです。

一番困るのは水が必要な代掻き作業。

この代掻き作業は土をトロトロにする為に大量の水が田んぼに必要になります。4年前の小雪の年は水がなくて代掻きが出来ず、耕作を断念する圃場もありました。

また除草する際も田んぼに水が必要になります。除草ができなければ田んぼ一面ヒエやホタルイなどの雑草で覆いつくされ稲がしっかりと成長してくれません。

稲は「水稲」と呼ばれますが、名前の通り成長には水がかかせません。雪解け水は稲にとっても大変重要な水となるのです。

今年はまだこの投雪機の出番がなく寂しさすら感じております。笑

昨年の夏は雨乞いをしましたが今年の冬は雪乞いをしなければなりません。笑

降りすぎてしまうと除雪が大変だったり、屋根の雪下ろしが大変だったり、車がはまってしまったり、苦労することは沢山あります。ただ雪も「自然の一部」であること。このパーツがなくなってしまうと様々なことに影響が出てしまいます。また、この美しい雪化粧した景色が見れなくなってしまうのは悲しすぎます。

棚田の農業や松代の文化などを通して、皆様に雪の素晴らしさもお伝え出来ればと思います。

石塚