皆様こんにちは。
世間では、早く訪れた桜の話題をよく耳にするそんな2023年の春シーズンです。
妻有でも早い春の訪れを雪解けの速さと共に感じています。
写真は現在の星峠の様子です。
例年の今頃はまだまだ雪が残り雪の白色が目立つ風景ですが、今年は小雪だった為すでに地が見える田んぼが多く伺えます。
雪消えが早い為、まつだい棚田バンクの春作業も例年に比べ早いペースで進んでおります。
前回のコラムで紹介させて頂いた春の作業に引き続き、現在の松代の様子や農作業についてご紹介していきたいと思います。
こちらはカバコフの棚田の様子です。
1カ月前に1m弱あった雪の壁もすでに溶けてなくなり、芝生の緑がポツポツと見え始めています。田んぼで作業を行っていると冬眠から起きてきたカエル達の姿も伺えます。
除雪作業を行った苗代はこんな様子です。
田んぼに水を張り、トラクタに取り付けた投雪機で除雪を行いました。
現在は濡れて柔らかくなっている田面を固める為に外周に溝を堀って排水を行い田んぼが乾くのを待っております。
水を早く排水させる工夫として、写真のように額縁明渠という溝を田んぼの外周に作りました。
田んぼが乾くと、いよいよ種もみの播種作業が始まります。
また同時進行で種籾の準備を行います。
こちらの籾は魚沼産コシヒカリの種籾になります。
実は種まきをするまで沢山の行程があります。
このまま種を撒いても休眠状態に入っている種籾はすぐには芽を出してくれません。また病害にかかるリスクもあります。
約60℃のお湯に浸け、殺菌を行う「温湯消毒」という行程が一番最初に行われます。
最近では種籾に害のない菌の膜を籾の表面に張ることによって種籾を菌からガードする資材が主流となってきました。
次の行程では塩水に浸けることによって芽の出る確率の低い軽い籾を選別する「塩水選」という作業が行われます。
その後、前回のコラムでもご紹介した休眠状態の種籾を眠りから起こす「浸種」と「催芽」という作業が行われます。
こちらの機械は催芽機という機械です。
水に温度をかけ、ポンプによって桶の水を循環させる事によって籾が酸欠状態になってしまうのを防ぎます。普通の桶に浸けているだけでも芽は出るのですが、出来る限りすべての籾が芽を出し、なおかつ同じタイミングで籾が休眠から覚める様にこのような機材も使用します。
(苗の生育には発芽のタイミングを揃えるというのは次のステップにつなげる為にも大事なアクションです)
次回のコラムでも苗達の成長を皆様にご紹介していきたいと思います。
次に田んぼの作業にフォーカスを当てます。
こちらは松代エリアの田んぼです。
やはり日当たりのいい田んぼには雪がありません。コラムの冒頭にお話しましたが小雪である年は田んぼの用水が足りなくなることが予想されます。
現在溜まっている水を少しでも無駄にしない様に、田んぼを見回って畦から水が漏れていないかを確認しながら田周りを行います。水尻からの漏れもないようにしっかりと土嚢を入れ関を作ります。
水回りをしていると、農業を始めた頃に「水がない面(ダムでいう放水側)をいくら抑えても水は止まらんぞ」と当時の親方に笑われた事を今でも思い出します。(笑)
よく考えれば当たり前ですがその当時の自分にとっては衝撃でした。
下の写真を見ると土嚢の手前にしっかりとベトの関を作って水が漏れていない状態が分かります。
この後は耕運、代掻き、田植えと作業は機械での作業がほとんどになります。
田んぼの作業の合間をみてパートナーとなるトラクター達の整備も行っていきます。
棚田バンクでは2台のトラクターを所有しております。
2台共同じようなクボタ社製のオレンジのトラクターに見えますが、動かしてみると全く性能の違うトラクターになります。
他の地域から訪れた農業者の方はよく口を揃えて「新潟はクローラーのトラクターが多いね」と言います。
クローラのトラクターとは2枚目の写真のトラクターのように車輪ではなくベルト状の足回りになっているトラクターのことを指します。
新潟県の中でも特に中越地方は粘土質で粘っこい土質になる為、タイヤのトラクターでは田んぼの中で亀になってしまい動けなくなることもしばしば。
価格は高価にはなりますが、こういったトラブルを防ぐためにクローラータイプのトラクタを使用する農家さんがこちらの地域では多くいます。
ただタイヤタイプのトラクターの方が旋回性能がよかったり、部品代や工賃など維持費が安いメリットがある為、自分の圃場に合せ機械をチョイスするといった難しさも農業の一つではないでしょうか。
ここまで4月上旬の作業や様子を紹介してきました。
苗代と、種籾の準備が整うといよいよ種撒きのスタートです。
今年の棚田バンクの種まきは4月の15日から20日がスタートになりそうです。
農家はこの作業が始まると「いよいよ始まるか」と気が引き締まります。
生き物と向き合うのは自然を相手にする場面が多くイレギュラーだらけです。その為農業は何年経験しても春を迎える度「初心者」だなと感じます。ただその中でも経験を積むごとに感じるのは「逆らう」のではなく波長を合せることで「受け流す」というのがこの道のコツだなと思います。
小雪や高温障害、長雨など色んな困難はありますがこの棚田の農業、地域のコミュニティと共存して壁を乗り越えて行きたいと思います。
今シーズンのまつだい棚田バンクもよろしくお願いいたします。
(2023/4/9)